『ラップスタア誕生 2023』に勝ち残ったラッパーSTICKY BUDSを特集

放送後には、「あのラッパーはヤバい!」「なんであのラッパーが選ばれなかった?」と毎回ヘッズの話題をかっさらう番組・AbemaTV『ラップスタア誕生 2023』。


執筆時(3/17現在)には、

・応募総数3457名から動画審査 ➡︎ 130名が通過
・3つのライブハウスで審査された"AREA TRIAL" ➡︎ 30名が通過

・A〜Fの6ブロックに分かれ、スタジオで行われた"SELECTION CYPHER" ➡︎ 10名が通過したところだ。


この記事では、その10名の中から STICKY BUDS をピックアップし、彼のバックボーンや代表曲を取り上げたい。


"SELECTION CYPHER"の中で、もっともレベルが高かったと言われるグループDのトップバッタを務めたのがSTICKY BUDSだ。野生味にあふれたルックス、少しカスれた声で織りなすフローがラッパーらしいラッパーで存在感を見せつけた。


2年前に行われた『ラップスタア誕生 2021』にもSELECTION CYPHERまで勝ち進んでおり、YouTubeのコメント欄には、STICKY BUDSを推す声が多かった。(誇張じゃないから確かめて!)


前回は残念ながらそこで落選となったが、彼のことを初めて知った人が多かっただろう。BoomBapスタイルで、すでにアルバム2枚とEPを1枚をリリース。ライブも精力的に行っており、実力をつけている。


バックボーン

STICKY BUDSが育ったのは、大阪の南部 泉北エリアだ。高度経済成長期に大阪のベッドタウンとして、泉北高速鉄道(現 南海電車)の駅を中心に開発が進められた。(※余談であるが、著者もこの地域の団地で育つ)


大阪から電車で30分ほどで着く郊外の新興住宅地。駅前には広々としたローターリーがあり、道幅も広く、自然が多いのも特徴だ。


また、岸和田を中心とした泉州地区が隣にあることもあり、TEN'S UNIQUEも在籍するHIPHOP集団・ CHUPA CHAPSに所属している。そんな大らかさと下町っぽさが程よくミックスされた環境が、楽曲にも反映されている。



代表曲

STICKY BUDS / NANKAI feat.サラムライ

(2021年発表/EP『NANKAI SMOKERS』に収録曲)

レペゼン泉北

「Hoodは泉北一号0722.0725 深井ガオ力栂.光明.中央」と地名を多く登場させた泉北愛にあふれた曲。 プロデュースはBONSAI RECORDのDJ AKで、ボーカルをチョップさせたサウンドの上を、STICKY BUDSがホップしながら乗りこなしている。客演には2001年よりこの地でHIP HOPを根付かせる 章楽(Verse2) と EASY(Verse3)の2MCをフィーチャー。大人の余裕を感じさせるダウナーなフローで、頼もしい後輩と地元を歌にできた喜びが感じられる。



STICKY BUDS / Point Blank (feat.Natty) 

(2022年発表 / アルバム『Get Dream Story』 に収録)

母音の角を取ることでスモーキーさを際立たせ、ビートの流れに言葉を預けたSTICKY BUDSのフロー。シンガーNattyは、いつ壊れてもおかしくないギリギリの状況を切なげに、ビート寄り添うように歌っている。



STICKY BUDS / SABOLOW

(2022年発表 / アルバム『Get Dream Story』 に収録)

STICKY BUDSの自宅だと思われる映像から始まるMV。MPCやレコード、スケートボード、スプレー缶に囲まれHIP HOP漬けの生活であることがわかる。

この曲では、張りつめてばかりいないで、たまにはサボろうと訴えている。BPMは早めだが、肩の力の抜けたラップ、気だるい女性Vo.サンプリングが、休日のChillな心地よさを体現している。  



KID PENSEUR / Over dose feat.STICKY BUDS

大阪を拠点に活動する2002年生まれのラッパー KID PENSEUR の楽曲に客演参加した曲。他にも共作があり、2人の仲の良さが伺える。タイトルの通りぶっ飛んだ曲で、周囲を気にせず、今をことことん楽しもうと訴える。刹那な快楽性の追求に若さがあふれる。



LAST No. 

(2022年発表 / アルバム『Get Dream Story』 に収録)

アルバムのラストを飾る曲で、強くアタックされたピアノが切なさを誘う。そこには強気なラッパーとしての表の顔からは想像もできない、苦悩がつづられている。


四六時中 歌詞を書いても食えてねぇ
稼げねえけど好きだしやめれねぇ
あんとき持ったペンはそのまま
痛みpainが、突き進む糧になる

〜「LAST No. 」のリリックより引用〜


知りたかったような、知りたくなかったような内情が語られており、リスナーは上手くいかない自分と重ね合わせるだろう。苦悩の中から希望を見出そうとする姿に心が打たれる。


歯を食いしばりながら、微かな光に向かって進む後ろ姿を想像し、グッと応援したくなった。『ラップスタア誕生2023」で更なる脚光を浴びることを期待したい。



text by ドラム師匠




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